
製造業におけるPFAS含有リスクの確認と対応
部材調査・サプライチェーン管理・代替設計の進め方
近年、PFAS(ピーファス)に関する規制や顧客要求は、化学メーカーだけでなく、部品・材料を調達して製品を設計する製造業全体の課題になりつつあります。PFASは、フッ素樹脂、撥水・撥油処理、表面処理剤、潤滑剤、シール材、工程用薬剤など、完成品からは見えにくい場所に使われている場合があります。
特にヒンジ・可動部品・摺動部品では、フッ素系グリスやPTFE添加剤がPFAS確認の対象になる場合があります。本記事では、製造業がPFAS含有リスクを確認・低減するために、何を調べ、どの部門が関与し、どの順番で対応を進めるべきかを実務視点で整理します。あわせて、代替グリスへの変更や、潤滑剤に依存しないグリスレス構造によるリスク低減の考え方も解説します。

本記事についてのご注意
本記事は、公開情報をもとにPFAS規制の一般的な動向と製造業における実務対応の考え方を整理したものです。個別製品への適用可否、含有判定、法令適合性については、最新の法令・当局資料・サプライヤー証明書等をご確認ください。また、「PFASフリー」「非含有」等の表現は、対象物質・確認範囲・分析条件・顧客要求によって意味が異なる場合があります。
関連記事:ヒンジ・可動部品におけるPFAS対応
本記事では、製造業全般におけるPFAS含有リスクの確認・低減の進め方を解説します。ヒンジや可動部品で見落とされやすいフッ素系グリス、PFPE・PTFEとPFAS規制の関係、グリスレス構造によるリスク低減の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
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1 PFASの基礎知識と管理強化が進む背景 2 世界各国におけるPFAS管理強化の動向 3 製造業でPFAS確認の対象になりやすい領域 4 PFAS調査を進めるための実務ステップ 5 PFASフリー化はなぜ難しいのか――代替検討で見るべき評価軸 6 顧客からPFAS調査を求められたときの対応 7 まとめ1. PFASの基礎知識と管理強化が進む背景

PFASとは、有機フッ素化合物の総称です。炭素とフッ素の結合が非常に強固であるため、耐熱性、耐薬品性、撥水性、撥油性、低摩擦性などに優れています。そのため、半導体製造、電子部品、自動車、医療、食品包装、繊維、表面処理、潤滑剤など、幅広い分野で利用されてきました。
一方で、PFASは環境中で分解されにくく、長期間残留することから「永遠の化学物質」と呼ばれることがあります。近年では、飲料水や地下水からの検出、環境中での長期残留などが社会的な課題として注目され、世界各国で規制や管理強化が進んでいます。
ポイント
PFASの特徴は「高い安定性」です。製品性能の面では大きな利点になりますが、環境中で分解されにくいという面ではリスクにもなります。製造業では、この利便性と環境負荷の両面を踏まえた材料選定が求められます。
2. 世界各国におけるPFAS管理強化の動向

PFASに関する規制や管理要求は、欧州、米国、日本、国際条約の各レベルで進んでいます。国や地域によって対象物質、用途、しきい値、施行時期は異なりますが、共通しているのは、PFASの使用実態やサプライチェーン情報をより正確に把握する方向へ進んでいる点です。
現実的な議論:全用途で一律にPFASフリー化できるわけではありません
PFASは高い性能を担ってきた材料・薬剤でもあるため、すべての用途で一気に代替できるわけではありません。実務上は、非必須用途や代替可能な用途からPFAS含有リスクを低減し、代替が難しい用途では猶予期間、用途別の例外、管理付き使用、排出管理などを組み合わせる議論が進んでいます。
※上記は2026年6月時点の公開情報をもとにした一般的な整理です。審議状況、対象物質、しきい値、適用除外、施行時期は変更される可能性があるため、最新情報は各国・地域の規制当局および顧客要求をご確認ください。
実務上の考え方
規制情報は国・地域ごとに更新されます。製造業では、法令そのものの確認に加え、顧客要求、業界基準、サプライヤーの供給方針を合わせて確認することが重要です。
3. 製造業でPFAS確認の対象になりやすい領域

PFAS対応で難しいのは、完成品の外観やBOMだけでは、PFAS使用の有無を判断しにくいことです。PFASは主材料として使われる場合だけでなく、添加剤、表面処理剤、潤滑剤、工程用薬剤、副資材などに含まれる場合があります。
樹脂・ゴム部品
フッ素樹脂、フッ素ゴム、シール材、Oリング、撥水性を付与した樹脂部品など。
表面処理・コーティング
撥水、防汚、非粘着、低摩擦、メッキ処理や前処理工程で使われる薬剤など。
潤滑剤・グリス
PFPE基油、PTFE添加剤などを含むフッ素系グリス。ヒンジ・可動部品・摺動部品では特に確認が必要です。
工程用薬剤
離型剤、洗浄剤、防錆剤、エッチング剤、メッキ処理剤など。
梱包・副資材
撥水紙、保護フィルム、特殊テープ、緩衝材、輸送時の防湿材など。
関連記事・製品:摺動部品・ヒンジのPFAS対応
可動部品では、潤滑剤に含まれるフッ素系グリスがPFAS確認のポイントになる場合があります。フッ素系グリスとグリスレス構造の考え方は解説記事で、潤滑剤に頼らない実際の製品は「グリスレストルクヒンジ」の製品ページでご確認いただけます。
4. PFAS調査を進めるための実務ステップ
PFAS対応は、特定の部門だけで完結するものではありません。設計、調達、品質保証、営業、環境管理などが同じ情報を共有し、優先順位を決めて進める必要があります。

部門別の役割分担
| 部門 | 主な役割 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 設計 | 仕様・材料・構造の見直し | PFASを使う機能が本当に必要か、構造で代替できないか |
| 調達 | サプライヤー調査・代替先探索 | 含有情報、供給継続性、代替材料の有無 |
| 品質保証 | 証明書管理・顧客回答 | 回答根拠、対象範囲、最新版管理、顧客要求との整合 |
| 営業 | 顧客要求の把握・社内展開 | 顧客が求めるPFAS定義、対象法規、回答期限 |
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スタッフ株式会社では、使用環境や必要トルクに応じて、代替グリスの検討からグリスレス構造による設計提案まで対応します。
5. PFASフリー化はなぜ難しいのか――代替検討で見るべき評価軸
PFAS含有リスクの低減では、単に「PFAS非含有が確認された材料」に置き換えるだけでは不十分な場合があります。PFASは、耐熱性、耐薬品性、低摩擦性、撥水撥油性など、複数の機能を同時に担っていることがあるためです。代替材料が性能不足で早期故障を起こしたり、別の環境懸念物質を含んでいたりすれば、結果的に品質問題や再設計につながります。
重要:代替材だけでは解決できない場合があります
PFASが担っていた機能を、非PFAS材料だけで同等に置き換えることが難しい場合があります。特に潤滑剤・グリスの分野では、低摩擦性、耐熱性、耐薬品性、酸化安定性などを同時に満たす必要があり、単純な材料置換では性能低下や寿命短縮につながることがあります。このような場合、代替材料を探すだけでなく、形状、構造、摺動方式、使用条件を含めて設計そのものを見直すことが有効です。
代替方法は「代替グリス」と「グリスレス構造」の両面で検討する
| 対応方法 | 特徴 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 代替グリスへの変更 | 既存構造を活かしやすい | 設計変更を最小限にしたい場合 | トルク、寿命、温度特性、材料適合性の再評価が必要 |
| グリスレス構造 | 潤滑剤への依存を減らせる | PFAS調査・顧客説明性を高めたい場合 | 構造設計・トルク設計の見直しが必要 |
| 材料・表面処理の見直し | 部材単位で対応しやすい | 樹脂・コーティング由来のリスクがある場合 | 性能、供給性、コストの確認が必要 |
スタッフの対応:代替グリス検討からグリスレス構造まで
可動部品・摺動部品では、フッ素系グリス(PFPE・PTFE)がPFAS確認のポイントになりがちです。ここで重要なのは、「フッ素系グリスを別のグリスに置き換える」だけが選択肢ではないという点です。スタッフ株式会社では、用途や使用環境に応じて、代替グリスの検討と、潤滑剤に頼らないグリスレス構造の両面からご提案します。
グリスレストルクヒンジは、潤滑剤に頼らない構造でトルクを保持するため、グリス由来のPFAS含有リスクを設計段階から低減しやすい選択肢です。PFASフリー化が難しい領域ほど、材料だけでなく構造・設計でPFASに依存しない方法を検討することが、安定した品質と顧客説明性の両立につながります。
6. 顧客からPFAS調査を求められたときの対応

今後、完成品メーカーやグローバル企業から、PFASの含有有無に関する調査依頼が増えることが想定されます。こうした調査では、単に「PFASフリーです」「含有していません」と回答するだけでは不十分な場合があります。回答品質を高めるには、どの物質を対象に、どの製品・部材について、どの範囲まで確認し、何を根拠に回答しているのかを明確にすることが重要です。
顧客回答では、少なくとも「対象物質」「対象製品」「確認範囲」「確認根拠」「回答日」を整理しておくことで、後日の追加確認や認識違いを防ぎやすくなります。特にPFASは定義や対象範囲が顧客要求・法規制・業界基準によって異なる場合があるため、回答前に前提条件を確認しておくことが欠かせません。
回答品質を高めるポイント
PFAS調査への回答では、「PFASフリー」という言葉だけでなく、確認した対象範囲と根拠資料をセットで示すことが重要です。たとえば、SDS、非含有証明、サプライヤー回答、材料仕様、工程情報などを整理しておくことで、顧客からの追加確認にも対応しやすくなります。
潤滑剤に依存しない構造は、顧客回答の根拠を整理しやすい
PFASを含む潤滑剤やフッ素系材料への依存を減らした部品であれば、顧客調査時に確認すべき範囲を整理しやすくなります。グリスレストルクヒンジのように、潤滑剤に頼らない構造を採用することは、PFAS含有リスクの低減だけでなく、顧客への説明性を高めるうえでも有効です。
7. まとめ

PFASに関する規制や顧客要求は、特定の化学物質だけを確認すればよい単純なテーマではありません。製造業では、材料、表面処理、潤滑剤、工程用薬剤、梱包材など、製品の設計・調達・製造に関わる広い範囲で確認が必要になる場合があります。
重要なのは、規制が確定してから慌てて対応するのではなく、まず自社製品のどこにPFASが関係し得るのかを棚卸しし、リスクの高い製品・部材から優先的に確認することです。設計、調達、品質保証、営業が連携し、顧客からの調査依頼に対して根拠ある回答ができる体制を整えることが、今後の取引継続や新規案件獲得にもつながります。
一方で、PFASフリー化は、すべての用途で簡単に実現できるものではありません。PFASが担ってきた性能を非PFAS材料で置き換えるには、機能性能、長期信頼性、規制リスク、供給安定性、顧客説明性を総合的に評価する必要があります。特に可動部品や摺動部品では、代替グリスの検討だけでなく、潤滑剤に依存しない構造設計が有効な選択肢になります。
ヒンジ・可動部品のPFAS対応を詳しく知りたい方へ
ヒンジや可動部品では、フッ素系グリスがPFAS確認のポイントになる場合があります。PFPE・PTFEとPFAS規制の関係、グリスレス構造によるリスク低減の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
PFASフリー × 潤滑油不要 グリスレストルクヒンジの記事を見る ▶ヒンジ・機構部品におけるPFAS含有リスク低減をご検討の方へ
スタッフ株式会社では、ヒンジをはじめとする機構部品の設計・製造を通じて、代替グリスの検討、潤滑剤に頼らないグリスレス構造、環境配慮型部品への切り替えに関するご相談を承ります。用途、必要トルク、使用環境、顧客要求に応じて、最適な部品構成をご提案します。





