![[解説記事]5GHz/28GHz共用と高効率化を実現!平面型反射板の新技術を発表](https://www.staf.co.jp/dcms_media/image/copy_Conference.jpeg)
5GHz/28GHz共用と高効率化を実現!平面型反射板の新技術を発表
~垂直/水平両偏波対応も達成し、ローカル5Gの多様な電波環境改善に貢献~
スタッフ株式会社(本社:神奈川県横浜市港北区、代表取締役:中山 和則)は、2025年3月25日(火) に東京都市大学で開催された電子情報通信学会総合大会において、平面型反射板に関する画期的な研究成果を2件発表いたしました。本研究は、ローカル5Gの普及に不可欠な電波伝搬環境の改善に貢献するものです。
! 研究成果ポイント
線状導体素子を平行に配置した平面型反射板により、ローカル5Gの課題を解決
① 従来の線状素子反射板の課題であった反射レベルを4dB改善
② サブ6GHz帯とミリ波帯の両周波数帯に単一素子で対応
③ 水平・垂直両偏波に単一素子で対応
研究の背景と課題

近年、工場やオフィスなど特定のエリアで高速・大容量・低遅延な通信を実現するローカル5Gの導入が進んでいます。しかし、建物構造による電波の遮蔽や、T字路・L字路のような場所で電波を効率的に届けたいといったニーズに対し、従来の電波伝搬対策では解決が難しいケースがありました。
従来の反射板の課題
一般的な金属板などの反射板では、以下のような課題がありました。
- 平面で電波を直角に曲げるのが難しく、壁からの突出量が大きくなる
- 設置場所が限られ、美観を損なう場合がある
- サブ6GHz帯とミリ波帯など、複数の周波数帯に一つの反射板で対応するのが困難
メタサーフェス反射板の限界
電波の反射方向を制御できるメタサーフェスを用いた反射板でも、以下の課題がありました。
- 電波を垂直方向(90度)に曲げることが原理的に困難
- 複雑な構造のため製造コストが高い傾向がある
- 対応できる偏波(電波の振動方向)に制約がある場合が多い
ローカル5G導入における電波伝搬の課題
特にローカル5Gで利用される高い周波数帯(ミリ波など)は、直進性が強く、遮蔽物の影響を受けやすいため、以下のような課題に直面します。
- 建物構造による電波の遮蔽:壁や設備による減衰が大きい
- デッドゾーンの発生:電波が回り込みにくく、届かない場所が生じる
- 基地局設置位置の制約:エリア全体をカバーするために多数の基地局が必要になる場合がある
そこで、薄型・平面で、電波を効率よく90度曲げられ、かつローカル5Gで使われる複数の周波数帯・偏波に対応できる新しい反射板技術が求められていました。
研究の概要と成果:シンプルな構造で課題を解決

今回、スタッフ株式会社は、金属の細い線(線状導体素子)を平行に一定間隔で並べるというシンプルな構造(回折格子)で、これらの課題を解決する平面型反射板を開発し、その成果を電子情報通信学会で2件発表しました。
技術革新ポイント

直角方向(黄矢印)への反射波
シンプルな線状素子の配置で高性能を実現
線状導体素子を用いた回折格子の原理に基づき、素子の形状や配置を最適化することで、複雑なメタサーフェス構造を用いることなく、電波をほぼ垂直(90度)に曲げ、かつ複数の周波数・偏波に対応する優れた反射特性を実現しました。
平面型反射板の動作原理 ~高校生向け詳細解説~
【1. なぜ「平面」で「電波を曲げる」技術が必要なの?】
- ローカル5Gで使われる高い周波数の電波は、障害物に弱く、建物や通路の角などで「デッドゾーン(電波の死角)」ができやすい。

- 従来の金属板では90度反射は苦手で、壁から大きく突出してしまう。メタサーフェスは高価で90度反射が難しい場合がある。
- そこで、薄型・平面で、設置しやすく、電波を効率よく90度曲げられ、複数の周波数・偏波に対応できる新しい反射板が求められていた。
【2. どうやって曲げるの? ~回折格子の原理~】
この反射板は、物理現象である「回折格子(かいせつこうし)」の原理を応用しています。
- ① 回折格子とは?
波(光や電波)の波長に近い間隔で、たくさんの溝やスリット、あるいは今回の反射板のように「金属の細い線(線状導体素子)」を規則正しく並べたもの。CD/DVDの虹色もこの原理。 - ② 電波が当たると…
反射板に電波が入射すると、各金属線に電流が誘起されます(各線が小さなアンテナになる)。 - ③ 新たな電波が発生!
電流が流れた各金属線から、新たな電波が「再放射」されます(たくさんの小さな波源ができる)。 - ④ 波の重ね合わせ(干渉)
それぞれの金属線から出た再放射波がお互いに重なり合い、波の山と山/谷と谷が重なれば「強め合い」、山と谷が重なれば「弱め合い」ます。これを「干渉」と呼びます。 - ⑤ 狙った方向へ!
金属線を規則正しく(周期的)に、精密に計算された間隔で配置することで、特定の方向(今回は90度方向)でのみ波が強め合い、他の方向では弱め合うように設計されています。 - ⑥ 結果:90度反射!
これにより、あたかも電波が90度方向に強く反射されたように見えます。
【3. 設計の工夫でさらに高性能に!】
素子の形状、間隔、配置を最適化することで、様々な要求に応えます。
- 高効率化:素子を束ねる構造で反射レベルを4dB改善 ([B-1A-05])。
- 複数周波数対応:素子グループ間/内の間隔調整で5GHz/28GHz両対応 ([B-1A-05])。
- 両偏波対応:「梯子型」構造で水平・垂直両方の偏波に対応 ([B-1A-06])。
【4. まとめ】
シンプルな「線状導体素子」を並べた構造でも、波の「回折」と「干渉」を巧みに利用し、精密な設計を行うことで、「平面」「90度反射」「高効率」「複数周波数対応」「両偏波対応」「電源必要無」という高度な機能を実現しています。
シンプルな構造で、「平面」「90度反射」「複数周波数帯対応」「両偏波対応」という、ローカル5G環境で求められる要求を満たす反射板を実現しました。
ローカル5Gの電波伝搬でお困りではありませんか?
現在弊社では、本技術の実用化に向けてご協力いただけるパートナー様を募集しています。本技術を試してみたいという方はぜひ下記リンクよりご連絡下さい。
今後の展開:実用化に向けて
本研究で開発した反射板については、すでに試作品を作成し、電波暗室内での基本的な性能評価を完了しています。今後は、実用化に向けた最終段階として、実際の電波環境下でのフィールドテストを進めてまいります。
実用化に向けたステップ
- 実際の工場やオフィスなどのローカル5G環境におけるフィールドテストの実施
- フィールドテスト結果に基づく製品仕様の最終化
- 量産体制の確立と品質管理基準の設定
- システムインテグレーター様との連携による導入支援体制の構築
- ユーザー様向けの設置・活用ガイドラインの作成
追い風となる電波法改正の動き
これまで電波法上、一般の利用が制限されていた「反射板(受動反射板)」について、総務省において制度改正の検討が進められています。これにより、免許不要で利用できる反射板の活用範囲が広がり、本研究成果の実用化と普及を後押しすることが期待されます。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000683.html
スタッフ株式会社は、一昨年発表した鋸歯状反射板※や今回の研究成果を早期に実用化し、ローカル5G導入における電波の課題解決に貢献してまいります。
※鋸歯状反射板については「こちら」を参照下さい。
発表論文情報
電子情報通信学会 2025年総合大会 発表詳細
[B-1A-05] 線状回折格子による5GHz/28GHz共用の平面型反射装置の検討
- 著者: 〇関根 秀一¹, 髙瀬 実¹ (1. スタッフ株式会社)
- 発表学会: 電子情報通信学会 2025年総合大会
- セッション: 一般セッション(B) [B-1A]アンテナ・伝播A
- 発表日時: 2025年3月25日(火) 10:45 〜 11:00
- 会場: 東京都市大学 1号館 2階 12L
- 座長: 中林 寛暁 (千葉工業大学)、松野 宏己 ((株)KDDI総合研究所)
- キーワード: 反射、マイクロ波、ミリ波、回折格子、ローカル5G
- 概要: 複数の線状素子を組にした回折格子を用いることで、反射レベルを改善しつつ、サブ6GHz帯(5GHz)とミリ波帯(28GHz)の両方に対応可能な平面型反射装置の設計と評価結果について報告。
- 発表詳細: 学会発表ページへ (PDFダウンロード、ブックマーク登録等はリンク先でご確認ください)
[B-1A-06] 梯子型回折格子による水平垂直偏波共用の平面型反射装置
- 著者: 〇髙瀬 実¹, 関根 秀一¹ (1. スタッフ株式会社)
- 発表学会: 電子情報通信学会 2025年総合大会
- セッション: 一般セッション(B) [B-1A]アンテナ・伝播A
- 発表日時: 2025年3月25日(火) 11:00 〜 11:15
- 会場: 東京都市大学 1号館 2階 12L
- 座長: 中林 寛暁 (千葉工業大学)、松野 宏己 ((株)KDDI総合研究所)
- キーワード: 反射、偏波、回折格子、ローカル5G
- 概要: 線状導体素子を梯子型に構成することで、水平・垂直両偏波に対してほぼ垂直に反射可能な平面型反射装置を提案し、その特性評価について報告。
- 発表詳細: 学会発表ページへ (PDFダウンロード、ブックマーク登録等はリンク先でご確認ください)
関連する過去の研究事例
当社では、これまでもローカル5G環境における電波伝搬の改善を目指し、反射板技術の研究開発を進めてきました。詳細は下記のページをご覧ください。
当社は学会発表を通じて研究成果を広く共有し、ローカル5Gをはじめとする無線通信技術の発展に貢献してまいります。
会社概要
会社名 | スタッフ株式会社 |
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所在地 | 神奈川県横浜市港北区 |
代表者 | 代表取締役 中山 和則 |
事業内容 | IoT/M2Mアンテナ、無線通信モジュール、小型電子デバイス用ヒンジ等の開発・製造・販売、および関連ソリューションの提供 |
ウェブサイト | https://www.staf.co.jp/ |
本件に関するお問い合わせ先
本研究内容、開発中の平面型反射板に関するご連絡・ご相談は、下記までお気軽にご連絡ください。
- 窓口: スタッフ株式会社 営業部
- 電話: 045-471-1371
- 受付時間: 平日 9:00〜12:15, 13:00~17:30
お問い合わせ
ローカル5G用のアンテナ、今回の研究内容に関するご質問など、お気軽にお問い合わせください。
御社の状況やニーズに合わせて最適なご提案をさせていただきます。
スタッフ株式会社 営業部
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関連製品情報
スタッフ株式会社では、ローカル5Gをはじめとする様々な無線通信システムに対応するアンテナ製品を幅広く取り揃えております。お客様の用途や設置環境に合わせた最適なアンテナ選定をサポートいたします。
5G Sub6対応アンテナ例
ミリ波対応アンテナ・ソリューション
ミリ波帯に対応したアンテナや、電波伝搬シミュレーション、エリア設計支援なども承っております。お気軽にご相談ください。