
VSWRとは?―電波の“流れ”のムダを可視化する指標
このコラムでは、アンテナ用語の中でも感覚的に理解しづらい『VSWR』を、数式を使わずにわかりやすく解説します。VSWRは水道のホースをイメージ
VSWRを理解するうえで、“水道のホース”をイメージすると分かりやすくなります。
蛇口は信号の発信源(無線機)、ホース部分は同軸ケーブル、先端ノズルがアンテナに相当します。
電波の流れを「水の流れ」に置き換えることで、詰まりや折れ曲がりがあれば流量が減るように、電波もロス(反射)が生じるイメージをつかみやすくなります。
VSWRは電波の“流れのムダ”を見える化する指標
VSWRは、この“電波の流れ”におけるムダ(反射)の割合を見える化する指標です。単に「どれだけロス(反射)が発生しているか」をチェックするのではなく、反射がどれくらい起きているかを数値化したものだと考えてください。
VSWRは比率なので単位がない
VSWRは日本語で電圧定在波比という名前の通り、比率を表すため、mWやdBなどの単位はありません。
VSWRは1が最も良い
VSWR=1というのは、入力した電力のほとんどがアンテナから放射され、反射によるロスがゼロであることを示す理想的な状態です。
VSWR=1のイメージ
ホースの接続がしっかりしていて、詰まりや折れ曲がりがなければ、水はスムーズに流れます。
アンテナに置き換えると、電力をムダなく放射・受信している状態で、反射によるロスはほぼありません。
VSWR=1は理想的な状態
実際にはこの状態を完全に実現するのは難しいですが、可能な限りVSWRを低くすることで、アンテナの効率を高めることができます。
ロス(反射)を減らし、通信品質を向上させるためにも、VSWRをモニタリングしながら最適化を図ることが重要です。
VSWRは1から大きくなる現実
インピーダンス不一致、ケーブルの潰れ、不適切な設置位置など、実際には様々な要因でVSWRが高くなります。
水道ホースでも曲がっていたり、つぶれていれば水の流れが悪くなるように、アンテナやケーブル(伝送経路)のトラブルで電波のロス(反射)が増え、VSWRは上昇してしまいます。
VSWRグラフは低いほど良い
このグラフはVSWRを横軸=周波数、縦軸=VSWRの値で示したものです。
一番下(0ではなく1)に近いほどVSWRが小さく、理想的な状態に近いことを表します。
例えば、VSWR=3なら約25%が反射されてしまい、VSWR=10になると約67%が反射されることになります。
VSWRのまとめ
まとめると、VSWRは「電波の‘流れのムダ’を可視化する指標」で、1が理想的です。
数値が大きくなるほど反射が増え、ロスが大きくなるため、性能評価時はできるだけVSWRを低く抑えるように設計・調整します。
水道ホースの状態が良ければ水がよく流れるように、アンテナやケーブルも適切に整備・設置することで電波ロスを極力減らすことが大切です。
IoTアンテナの設計で大切なポイント
IoT用アンテナは、ただ性能の良いものを端末に組み込めば解決というわけではありません。
実際には、筐体の材質や内部構造、搭載する場所、利用周波数帯との整合など、多くの要素がVSWRに影響を与えます。
適切な手順でアンテナを選定・配置し、インピーダンス整合や調整を行うことが、通信品質向上や省電力化において非常に重要です。
「アンテナをどこにどう組み込むか?」は製品開発の大きな課題でもあります。
もし、IoT端末へのアンテナ組み込みやVSWRの最適化にチャレンジしてみたい方は、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
豊富な経験を活かし、最適なアンテナ設計や選定、ケーブル配置などをサポートいたします。
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