
【アンテナ基礎講座】VSWRをわかりやすく解説
このコラムでは、アンテナ用語の中でも感覚的に理解しづらい 「VSWR (Voltage Standing Wave Ratio)」を、数式を使わずにわかりやすく解説します。
目次
! Point!
VSWRは電波の"流れのムダ"を可視化する指標です。
値が1に近いほど良く、通信品質向上のためにチェックすることが重要です。
VSWRは水道のホースをイメージ

VSWRを理解するうえで、"水道のホース"をイメージすると分かりやすくなります。
蛇口は信号の発信源(無線機)、ホース部分は同軸ケーブル、 先端ノズルがアンテナに相当します。
電波とホースの類似点
電波の流れを「水の流れ」に置き換えることで、 詰まりや折れ曲がりがあれば流量が減るように、電波もロス(反射)が生じる イメージをつかみやすくなります。
水道ホースと同様に、電波の経路にも 詰まりや障害 があるとスムーズに伝わりません。
VSWRは電波の"流れのムダ"を見える化する指標

VSWRは、この"電波の流れ"におけるムダ(反射)の割合を見える化する指標です。単に「どれだけロス(反射)が発生しているか」をチェックするのではなく、 反射がどれくらい起きているかを数値化したものだと考えてください。
VSWRとは具体的には?
日本語では「電圧定在波比」と呼ばれ、アンテナへの入力信号(送った電波)と反射信号(跳ね返ってきた電波)の比率を表します。電波の流れがスムーズであれば反射が少なく、VSWRの値は低くなります。
VSWRはアンテナとケーブル間の整合性や信号の伝送効率を評価する際に重要な指標です。ケーブルやアンテナの設計・選定時に確認されます。
VSWRは電波の伝送効率を数値化し、通信品質の良し悪しを判断する重要な指標です。
VSWRは比率なので単位がない

VSWRは日本語で電圧定在波比という名前の通り、
比率を表すため、mWやdBなどの単位はありません。
VSWRの表記方法
例えば「VSWR=1.5」と表記します。これは入射波(送った電波)と反射波(跳ね返ってくる電波)の比率を意味し、純粋な数値として扱われます。
他の無線パラメータとの違い
電力(mW)や利得(dB)などは特定の単位を持ちますが、VSWRは比率のみを表すため単位がありません。
VSWRは単位のない比率であり、数値が小さいほど良いことを示します。
アンテナ設計でお困りですか?
VSWRを改善して通信品質を高めたい、アンテナの選定に迷っているなど、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
スタッフ株式会社では、用途や環境に合わせたアンテナ設計・評価のサポートを行っています。
VSWRは1が最も良い

VSWR=1というのは、 入力した電力のほとんどがアンテナから放射され、反射によるロスがゼロであることを示す理想的な状態です。
VSWRの値が1から大きくなるほど、 「水道のホースが詰まった」ようにエネルギーが無駄になります。 数値が1に近いほど"良いアンテナ"と言えるでしょう。
VSWRは1が理想的で、値が大きくなるほど反射が大きく、無駄が多くなります。
VSWR=1のイメージ

ホースの接続がしっかりしていて、詰まりや折れ曲がりがなければ、水はスムーズに流れます。アンテナに置き換えると、 電力をムダなく放射・受信している状態 で、反射によるロスはほぼありません。

実際にはこの状態を完全に実現するのは難しいですが、
可能な限りVSWRを低くすることで、アンテナの効率を高めることができます。
理想的な状態の例
- アンテナとケーブルの特性インピーダンスが完全に一致
- コネクタやケーブルの接続が完璧
- アンテナ周辺に干渉物がない理想的な環境
現実的な目標値
例えばLTEでは広帯域になるため、VSWR=3~4以下を目標に、極力低くすることを目指します。(値は状況により変わります。)
VSWR=1の状態は理想的な電波の流れを意味し、実用上は可能な限り1に近づけることが目標です。
VSWRは1から大きくなる現実

インピーダンス不一致、ケーブルの潰れ、不適切な設置位置など、実際には様々な要因でVSWRが高くなります。水道ホースでも曲がっていたり、つぶれていれば水の流れが悪くなるように、 アンテナやケーブル(伝送経路)のトラブルで電波のロス(反射)が増え、VSWRは上昇してしまいます。
実用上のVSWRは様々な要因で理想値1より大きくなりますが、適切な設計・調整で最小化できます。
VSWRグラフは低いほど良い

このグラフはVSWRを横軸=周波数、縦軸=VSWRの値で示したものです。一番下(0ではなく1)に近いほどVSWRが小さく、理想的な状態に近いことを表します。例えば、VSWR=3なら約25%が反射されてしまい、VSWR=10になると約67%が反射されることになります。
VSWRグラフでは、使用周波数帯域全体でできるだけ低い値(1に近い)になっていることが理想的です。
関連記事
IoTアンテナの設計で大切なポイント
IoT用アンテナは、ただ性能の良いものを端末に組み込めば解決というわけではありません。実際には、 筐体の材質や内部構造、搭載する場所、利用周波数帯との整合など、多くの要素がVSWRに影響を与えます。
適切な手順でアンテナを選定・配置し、インピーダンス整合や調整を行うことが、通信品質向上や省電力化において非常に重要です。「アンテナをどこにどう組み込むか?」は製品開発の大きな課題でもあります。
もし、IoT端末へのアンテナ組み込みやVSWRの最適化にチャレンジしてみたい方は、ぜひスタッフ株式会社へお気軽にお問い合わせください。豊富な経験を活かし、最適なアンテナ設計や選定、ケーブル配置などをサポートいたします。
弊社アンテナの組み込みTips
弊社アンテナの組み込み方をわかりやすくまとめた資料を配布中です。詳しくは下記のページをご確認下さい。
お問い合わせ先
弊社では、アンテナを組み込む際に安心して市場にリリースできるよう、利得を測定し、電波法の範囲に収められるように調整が可能です。
技術サポート内容
- アンテナ選定のアドバイス
- VSWR測定・最適化支援
- 設置位置・方法のコンサルティング
- 電波法適合のための調整
- 通信距離・品質の改善提案
そのような技術サポートが必要な場合は、 当社の窓口 またはお取引のある商社様までお問い合わせください。
我々は、お客様の無線端末におけるアンテナの組み込みや性能最適化を支援し、より高性能な無線通信を実現します。皆様のお問い合わせを心よりお待ちしております。
IoT機器に最適な高性能アンテナをお探しですか?
スタッフ株式会社では、IoT機器に特化した高性能アンテナを多数ご用意しています。用途や周波数帯に合わせた最適なアンテナ選定をサポートします。