アンテナの利得(ゲイン)とは?
基礎からわかりやすく解説
アンテナの「利得(ゲイン)」とは、どのくらい強く電波を放射・受信できるかを示す重要な指標です。 文系の方や初心者には少々イメージしづらい部分もありますが、基礎を理解しておくことで IoT機器や無線通信のアンテナ選定に役立ちます。ここではよくある疑問をQ&A形式で解説しながら、 一般的なIoT機器で無指向性アンテナが好まれる理由についても触れていきます。
Q1. アンテナ利得とはどのような意味?
- 定義:アンテナが電波をどれほど強く放射/受信できるかを表す指標
- 単位:dB(デシベル)
- 実際の表記:dBi(デービーアイ と読む)
『利得』はどの程度強い電波を出したり受け取れたりするかを示します。 数値が大きいほど、特定の方向に強く電波を放射・受信できる場合が多いです。
Q2. 利得がどのくらい上がると通信距離は倍になるの?
一般的には6dBで通信距離2倍という目安が挙げられます。これは、 自由空間伝搬の理論上、電力が4倍(=6dB増)になると受信可能な距離はおよそ2倍になるからです。
- 3dB = 2倍の電力比
- 6dB = 4倍の電力比 → 距離は √4 = 2倍
ただし、建物内や市街地など障害物の多い環境では、反射や遮蔽によるパスロスが大きく、 この数値どおりにいかないことも多々あります。 あくまで理論的な目安としてお考えください。
Q3. 電波法によって利得の最大値は決まっている?
はい。無線機(通信モジュール)や、周波数帯や用途ごとに最大利得が規定されています。 たとえば通信モジュールを使用しているIoT機器のアンテナは、最大利得が3dBiであることが一般的です。 過度に強い電波が発生すると、周囲の通信品質に影響を与えたり、規制を超えてしまう恐れがあるからです。
Q4. 利得が高いほどアンテナは優秀?
── 一般的なIoT機器ではなぜ無指向性が好まれる?
一般的に、利得(dBi値)が高いほど特定の方向への電波放射・受信性能が向上するため、 「性能が良い」と評価される面があります。しかし、使用環境や目的に合わないアンテナでは 十分な効果を得られないこともあります。利得が高いアンテナほど指向性が強まる(狭い範囲に集中)場合が多く、 周囲全体への均一な通信が必要なシーンには向かないこともあるのです。
たとえば、IoT機器は多方向からのアクセスやデバイス間通信が行われるケースが一般的です。 設置場所や機器の向き、使われる環境が一定しないことも少なくありません。 そこで、全方位へほぼ均一に電波を放射する「無指向性アンテナ」が好まれます。 無指向性アンテナは、ある特定の方向へ高利得を得るというよりは、広いエリアをカバーし、 様々な位置にある機器と安定して通信できるメリットがあります。
以上の理由から、IoT機器や一般的な無線LANルータなどでは無指向性アンテナが多用される傾向にあります。 逆に、見通しのある特定の方向へ向けて長距離通信を行いたい場合は、 指向性を高めた(利得の大きい)アンテナが選択されることもあります。
さらに詳しく知りたい方へ
アンテナの利得や指向性について、リンゴの例えを用いて詳しく解説した記事があります。 dBiの概念や無指向性アンテナの理解を深めるために、ぜひご参照ください。
【基礎講座】アンテナの利得(Gain)とは?dBiと無指向性アンテナをやさしく解説
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